Darvish Journal 2012 Vol.7 - 相手投手がSiriに「どうすれば打ち取れる?」と問う程のハミルトンの打棒がダルビッシュを強烈にサポートする
ここまでのレギュラーシーズン、僕はダルビッシュの登板した試合は全てプレイボールから見てきた。前日朝まで飲んでようと何だろうと、プレイボールから見た。ところが昨日はうっかり寝坊、試合開始から2時間以上経ったところで目が覚め、慌ててMLB.comを開くとまだ1回裏。"Rain Delay"が表示されたままゲームが止まっている。ゲーム開始時間を考えると大分長いこと中断しているのだろうからよほど雨が酷いのだろう、今日はこのまま中止かなと思った矢先、ゲームは再開。とはいえこれだけ長時間の中断があった場合、一度暖めた肩が冷えてしまったスターターはマウンドを降りて次に備えるのが一般的。今日はいずれにしても、、と思いきや、ダルビッシュ続投。3アウトまで2時間以上かかった1回裏が終わり2回表のマウンドに上がったダルビッシュに、雨にも関わらず満員御礼Sold Outのファンは最高のスタンディングオーベーションで応え、アーリントンから遠く離れた東京から僕もその和に控えめに加わった。

2012.05.11 vs Los Angeles Angels of Anaheim
開幕前から「今季メジャーリーグ最高のrivalry」と称された、エンジェルスとレンジャーズのシーズン初対決。ご存知の通りエンジェルスはここまで絶不調、一方のレンジャーズは絶好調。まさか両者がこんな両極端なステータスで初戦を迎えるとは誰もが予想していなかったところだが、それでも昨日のゲームはエンジェルス先発が去年までレンジャーズのエースであり酒・ドラッグフリーのストレートエッジとして有名なイケメン、C.J.ウィルソン、そしてレンジャーズ先発は東洋が誇る世紀のロックスター、ダルビッシュということで、大いに注目を集めた。
因縁とかそういう話は置いておいてメジャー屈指のイケメンマッチアップとなったこのゲーム。まずはダルビッシュが1回表を簡単に片付けるとその裏、ウィルソンは不運な打球で1点を失い、なおも1アウト満塁というピンチ。ここで、テキサスの豪雨という思わぬアクシデント。日本だったら余裕で中止だが、2時間の中断を経てゲーム再開。時間があきすぎてしまったため、ウィルソンは敢えなく2番手のJ.ウィリアムスにマウンドを譲ることに。Rangersはこの「雨の恵み」を逃さず畳み掛け、鮮やかに6点を先取。一方のダルビッシュは異例の続投。2回表の初球、93mphの4シームでストライクを取ると、場内は割れんばかりの"Yuuuuuuuu!!!"コール。アーリントンのオーディエンスはベースボールをよく知っている。ダルビッシュはその後6回途中まで、2本のHRで3失点したものの危なげないピッチングで仕事を完了。味方打線もマフィアの2打席連続HRなど着々と点を取り、ダルビッシュはハーラートップタイの5勝目を悠々とマークした。
スケジュールが超タイトなメジャーリーグは、よほどのことがない限りゲームを中止にしない。中止にしても、そのしわ寄せが後々さらにヘヴィな形でやってくるからだ。前日もダブルヘッダーを戦って深夜に移動したレンジャーズは昨日も雨によるアクシデントとあまりにタフな2日間となったが、そんな中ダルビッシュが普通に6回途中まで投げたことは大きかった。そしてダルビッシュが余裕を持って投げられたのは言うまでもない、ハードワークの疲れを微塵も見せず打に打ちまくるオフェンスのおかげであり、その中心にいるのがもはやアンストッパブルな勢いでHRを打ちまくっているJ.ハミルトンだ。
Hamilton's two homers 05/12/12
前回で記事でも取り上げたダルビッシュの頼もしき相棒、ハミルトン(通称マフィア)はこの日も2打席連続HRを放ち、チーム33試合目で17号という犯罪的ペースで絶賛爆発中。これは1968年のF.ハワード以来のスピード記録だという。つまり、B.ボンズも開幕からこれだけのハイペースで打ち続けたことはないということだ。しかもハミルトンは4月下旬に数試合、戦線離脱している。もう"Red-Hot"どころではない。大袈裟でなく、どこに投げても打たれる気「しか」しないマフィアに対し、ライターは「速報!ハミルトンが凡退」と報じ、また他チームの投手に至ってはiPhoneを手にしてSiriに「どうすればハミルトンを打ち取れる?」と訊かざるを得ないくらい、お手上げ状態なのだ。
BREAKING: Josh Hamilton makes an out. No, I'm not kidding.
— Richard Justiceさん (@richardjustice) 5月 12, 2012Excuse me Mr.Hamilton ? You have time to sign??
— Brett Lawrieさん (@blawrie13) 5月 12, 2012Siri, how do you get Josh Hamilton out?
— Brandon McCarthyさん (@BMcCarthy32) 5月 12, 2012さて、そんなマフィアの強力すぎるバックアップもあり、ダルビッシュはここまで着々と勝利を積み重ねてきている。コントロールが中々安定しないことにやや不満を抱く声はあるものの、それはダルビッシュが「サイヤング賞級」のパフォーマンスを期待されている何よりの証拠。これは契約の金額だけでなく、それだけのものを期待せずにはいられない程のパフォーマンスを、ここまで既に見せつけているのだ。
Best stuff seen from a SP this year: 1. Strasburg. 2. Darvish. 3. Weaver
— Jon Heymanさん (@JonHeymanCBS) 5月 12, 2012開幕から1ヶ月で、Jon Heymanにここまで言わせるとは、それはもう過度な期待するなという方が無理ってものだ。
halvish
J.ハミルトンを巡るマネーゲームのキーとなる3つのリスク
今季開幕から絶好調のJ.ハミルトン(レンジャーズ)が、1試合4HRというTuesday Night Feverをやってのけた。
Hamilton's huge game 05/08/12
5打数5安打、4HR、8RBI、18トータルベース。世界中のアル中ヤク中に夢と希望を与える一世一代のパフォーマンスであった。単純にHRを4本放ったというだけでも凄すぎるが、ハミルトンの恐ろしさを何より物語るのが放ったHRのバリエーション。1本目は先発右腕のJ.アリエッタからセンターバックスクリーンへと運び、2本目は同じくアリエッタから高い弾道で今度はレフトへ。3本目はサウスポーのZ.フィリップスからバックスクリーン右への一発、そしてトドメの4本目は変則アンダースローのD.オデイからまたしてもバックスクリーン一直線の一撃。相手ピッチャーの利き腕も投球フォームも関係なく、センターを中心に右へ左へと白球の弧を描く様は、ホームランアーティストを通り越してもはや、予めインプットされた諸々の条件に基づいて必ずホームランを打つようバットの角度やスウィングのタイミングを精密にプログラミングされたスーパーコンピュータのようだ。カムデンヤードのオリオールズファンも4発目にはスタンディングオーベーションで讃える他なかったが、この敗戦には大いに満足して家路についたはずだ。
あんなに軽そうなスウィングで何であそこまで飛ぶのかと、いつも思う。たとえばイチローのHRは打った瞬間に真芯で捉えた会心の打球だとわかるし、鋭い弾道でスタンドに突き刺さるアーチがほとんどだが、ハミルトンのHRは一見フラフラっと上がった高い打球が伸びて伸びてフェンスの遥か上を超えて行く。バットに擦ったような打球がHRになる。これぞアメリカンスラッガーというべき弾道だ。
Hamilton's fourth home run
さて、MLB史上16人目という1試合4HRの興奮が未だ覚めやらない一方で、ハミルトンの今季終了後の去就を巡るディスカッションがにわかに盛り上がってきている。今シーズン限りでFAとなるハミルトンの契約問題は開幕前から注目を集めていたが、今季ここまでの打棒があまりに凄まじいため、そのマーケットバリューの高騰に周囲がセンシティブになっているのだ。
目下リーグ3冠王を独走中、レンジャーズ快走のエンジンとなっているハミルトンの実力に疑問を持つ人間は1人としていないだろう。ハミルトンといったら「アル中ヤク中の暗黒の過去から這い上がった遅咲きのシンデレラ」エピソードが未だに付き纏うが、遅咲きといってもまだ30歳。パフォーマンス的には今が旬といっていいどころか、身体能力も去ることながら何より卓越した技術で生きているタイプのプレイヤーだと思うので、むしろバッターとしての円熟味は今後さらに増していく気さえする。チームメイトのM.ヤングがまさにそういうタイプだ。
さて、そんな世紀のマフィアのマーケットバリュー、相場はどれくらいだろう。たとえば昨オフのA.プーホルスやP.フィルダー、つまり総額2億ドルオーバー級の契約を手にすることができるかというと、それは難しいのではないかと感じる。好調時のパフォーマンスは両者を凌ぐ程であることは既に充分証明済みだが、どうしても「リスク」がネックになる。第一に健康、第二にアルコール、そして最後はハミルトンに限らずだが、、ステロイドだ。
ハミルトンのアウトフィルダーとしての唯一の欠点は、健康だ。ケガが多い。2008年のブレイクイヤーこそ156試合に出場したが、以降3年間は2010年の133試合が最多で、絶好調の今季も既に1度短期離脱している。もっとも、133試合の出場でMVPを獲得してしまうあたりがハミルトンの凄みを感じさせるところではあるが、今のところ偶数年度に活躍する人疑惑が拭えない。そして健康のリスクは、誰でも年齢と共に高まっていく。ただでさえケガが多い30歳のプレイヤーへの8〜10年に及ぶような長期契約オファーはかなりリスクが高いと考えるのが妥当なので、仮に年2500万ドルクラスの高年俸でも4〜5年あたりの契約に抑えるという流れになるのではないかと考えられる。
次に、ハミルトンを語る上では書かせないアルコール&ドラッグの問題。こればっかりは人間性の問題なので何とも言えないところではあるが、あまり心配することではないような気がする。昨オフにアルコールを摂取してしまったことが発覚し「アル中再発か」とメディアを賑わせはしたが、しっかりと謝罪会見を開き今もしっかり禁酒しているようで、現在はご覧の通りの活躍。一度メジャーリーグを永久追放されたばかりか人間としてthe endを迎える寸前の地獄から努力して這い上がってきた男だ。ファン目線だから言えることかもわからないが、僕はハミルトンの前科をあれこれと掘り下げるのではなく、今彼が持っている人間としての強さを信じたい。
そして最後の懸念は、ステロイドだ。あんな人間離れしたホームランを連発されると、否が応でも疑惑の眼差しを向けられてしまうのは、現代MLBの大きなダークサイド。あのR.ブラウン(ミルウォーキー)だって騒がれたのだから、仕方ない。まあハミルトンに関しては、筋肉を増強する以前に大麻で身を滅ぼしていた男であるだけに、ドラッグ地獄から脱却した今さらたかがステロイドに手を出すようなことはないだろうと思っている。これもファン目線なのかもわからないが。
Hamilton confirms reports 02/03/12
というわけで、プレイヤーとしての実力を説明するのに細かいデータなど持ち出す必要もないハミルトンではあるが、セイバーメトリックスでは測定できないリスクを抱えたプレイヤーでもある。今オフにヒートアップするであろうハミルトン争奪戦は、まずはビッグマーケットチームを中心に、編成戦略と予算にマッチするチームが主導権を握るであろう。しかしマネーゲームの最後は結局、ハミルトンという人間にどう向き合い、何を信じるかという、極めてヒューマンティックな部分に左右されるかもしれない。
※参考
MLB Network's Insider with Ken Rosenthal discusses multiple future free agents such as Josh Hamilton and David Wright
halvish
Darvish Journal 2012 Vol.6 - 左バッター9人に不運なサンシャインヒット、硬すぎるマウンド、気紛れなアンパイアとの戦い
今更という感じではあるが、アメリカの"baseball"と日本の「野球」は違うし、MLBとNPBはもっと違う。競技のルールと仕組みは同じだが、言うまでもなくそれに対する考え方、価値観が異なるのだ。たとえば「良いピッチャー」とされるための条件が違えば、ゲームにおける審判の役割もまた違う。ダルビッシュがスプリングトレーニングから再三「こっちの雰囲気に慣れる必要がある」と話しているのはつまり、そういうことだ。

2012.05.06 vs Cleveland Indians @Progressive Field
目下Central Division1位と好調のインディアンスに対し、序盤から4シームのコマンドが安定せずブレーキングボールに頼るしかない苦しいピッチング。それでもキャリアハイの11Kを奪ったのは果てしないポテンシャルを感じさせてくれるばかりであるが、3回にA.カブレラの2ランダブルにエラーも絡み一挙3失点。カブレラのダブルは、デビュー戦を除きスコアリングポジションにランナーを置いて打たれた2本目のヒットだった(もう1本はジーターのバントヒット)。5回には売り出し中のJ.キプネスに甘い4シームをライトスタンドへ放り込まれ、最終的に6回4失点。ご自慢のモンスターオフェンスもインディアンス先発の豪腕U.ヒメネスの前に沈黙し、2-4で敗戦。ダルビッシュに初敗戦が記録された。
マスメディアが大好きな「メジャーの洗礼」というチープな言葉は使いたくないが、今日のゲームでは実に「メジャーリーグらしい」エッセンスをいくつか垣間みることができた。
左バッター9人&徹底待球の戦略的なインディアンスオフェンス

インディアンスは今日、スターティングラインナップにズラリと9人左バッター(スウィッチヒッター含む)を並べた。一部メディアではこの極端な左右の偏りを「ダルビッシュ対策」と論じたが、別にそういうわけではない。MLBはそもそも(NPBに比べ)左バッター及びスウィッチヒッターの割合が高く、中でも今季のインディアンスは日頃から左バッターが中心のチームなので、左バッターがズラリと並んでも特別不自然なことではない。とはいえ9人中9人が左バッターボックスに立つという極端なラインナップは、日本では中々お目にかかれない光景だろう。百戦錬磨のダルビッシュにとってもおそらく、キャリアではじめての経験であったはずだ。
引き出し豊富なダルビッシュだけに特別投げにくかったことはなかったかもしれないが、ダルビッシュを苦しめたのはインディアンスの一貫した待球作戦だった。今日のインディアンスオフェンスはドラクエ風に言うと「じっくり攻めよう」。初球からポンポン打ちにいくのでなく、深いカウントまで持っていって勝負に入る。今のダルビッシュのように球のキレ(Stuff)は素晴らしいがストライクがポンポン先行するわけではないタイプのスターターに対しては有効な攻め方だ。中々得点は奪えずとも球数を投げさせておいて、試合終盤に入る前にマウンドから引き摺り下ろすことで勝利の可能性を高めるという。ただでさえコマンドに苦しんでいたダルビッシュは、6イニングを投げ切るのに112球を要した。
個人主義のアメリカだけに、MLBはチームスポーツでありながらも各プレイヤーが好き勝手バットを振り回してるような世界であると思っている人もいるが、そうではない。GM・編成のレベルで策定された戦略を、トップダウンで現場レベルに落として行くというマネジメント重視の側面が結構強かったりする。インディアンスは近年随分と戦略的なチームになった印象があって、具体的には今日のような待球作戦を実現可能にするため初球からブンブン振ってポップフライを上げるような低IQのフリースウィンガーは基本お断りだったり、あるいは今日のヒメネスやD.ロウといったグラウンドボールピッチャーを集めることに重点を置いた編成戦略を敷いていたりする。「元祖マネーボール」のアスレチックスや赤靴下がここ数年で明らかに評価・編成方針を変えてきている中で、現在チーム四球数がリーグ1位のインディアンスは「古き良きマネーボール」を今最も体現しているチームといえるかもしれない。セイバーメトリックスはこの10年間で随分と変化、発展しており、それこそ『マネーボール』で描かれた出塁率至上主義が簡単に通用する時代ではなくなってきているが、やはりGM主導のトップダウン式マネジメントが極めて高い重要度を有していることは変わらないのだ。
デイゲーム名物の不運なサンシャインヒットに硬すぎるマウンド

Kinsler loses ball in the sun
結果的に今日のゲームを決めた3回の3失点したシーンは、J.デイモンが打ち上げたポップフライをI.キンスラーが落球したところからはじまった。太陽が目に入ってしまい、キンスラーは完全にボールを見失った。デイゲームが多いMLBではよくある光景で、イチロークラスの名手でもこればかりはどうしようもないときがあり、アルベール・カミュの『異邦人』ではないがまさに「太陽のせいだ」というべきアクシデントである。MLBでグラウンドボールピッチャーが重宝されるのは、こうした「サンシャインヒット」の可能性も含めてフライボールは"out of control"な部分が大きいと考えられているためでもある。
球場と気候の問題でいくと、場所によって随分と異なるマウンドの硬さもピッチャーには死活問題だ。今日ダルビッシュが投げたプログレッシブ・フィールドのマウンドはかなり硬かったようで、ゲーム開始前からしきりに気にしている様子が印象的だった。ゲーム中にも不安定な足場を何とか自分のものにしようと工夫していたはずだが、このマウンドがコマンドの乱れに大きく影響していたことには違いない。こればかりは今後時間をかけて、慣れていくしかないのではないだろうか。
アンパイアとの戦い
Darvish being squeezed by Umps is beginning to become a legitimate issue. Will be interesting to see the pitch trax after the game.
— Baseball Do Blogさん (@BaseballDo) 5月 6, 2012今日のゲームのアンパイアは、ダルビッシュ、ヒメネスの両スターターにかなり厳しかった。特にストライクゾーンの横幅がかなりシビアだったため、ダルビッシュは途中からほとんど左バッターインサイドに食い込むカッターやアウトサイドの2シームは投げず、スライダーやカーブといった縦に大きく変化するブレーキングボール一辺倒で戦うしかなかった。それでも早々打たれないどころかほとんどバットに当てられないのだからあのボールのキレが如何に凄まじいかという話ではあるが、かなり窮屈なピッチングを強いられたことは言うまでもない。ダルビッシュ自身もゲーム後「ちょっと厳しいとは思ったけれど…もっと甘いところに投げていればよかった」とコーナーを狙いすぎたピッチングを振り返った。
各アンパイアのストライクゾーンに個人差があるのは今更言うことでもないが、メジャーでは「アンパイアとの付き合い方」はピッチャーにとって重要な問題だ。際どい判定に対する抗議は当然の行為ではあるが、あくまで紳士的な態度であることは大事。当然ながらアンパイアも人間、感情の生き物なので、仮に侮辱的、高圧的な抗議などでアンパイアの気分を損なえばその後よりシビアな判定に苦しめられるというような可能性もないとはいえない。そしてアメリカではこれも"part of a game"と考えられている点で、プレイヤーから審判へのリスペクトがほとんど感じられないNPBとは大きく異なる。世紀の誤審と騒がれたA.ガララーガの「幻のパーフェクトゲーム」では、明らかな誤審により偉業を逃したガララーガが「人間誰にでも過ちはあるものだ」と主審のJ.ジョイスへのリスペクトを示し、翌日のゲームで監督の代わりにラインナップシートをジョイスに手渡しにいくという何とも粋な演出でアメリカンスポーツ史に残る美談となったことは記憶に新しい。
Galarraga, Joyce at the plate 06/03/10
審判は決してロボットではなく、またプレイヤーやコーチより格下でもなく、審判には審判の役割があり、彼等の仕事には当然のリスペクトが払われる。プレイヤーがいないとゲームが成り立たないのと全く同じように、審判がいないとゲームは成り立たないのだ。
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さて、次回登板(5/11)は待望のLAエンジェルス戦。ダルビッシュと入れ替わりでエンジェルスへと移籍した元レンジャーズエースのC.J.ウィルソンとの(因縁の?)マッチアップが予想されている。今日ようやく第1号HRを放ったA.プーホルスと、どんな勝負を見せてくれるだろうか。
halvsih
J.ウィーバーは「ノーヒッターを投げるべき男」だった
開幕から不振が続いているLA天使軍団のエース、J.ウィーバーが2日のミネソタ戦でノーヒットノーランを達成した。四球1つ出しただけの、準パーフェクトゲーム。チームで顔であるホームタウンボーイの偉業達成に、アナハイムのファンもこの日ばかりは不振のA.プーホルスへのブーイングも忘れて熱狂に酔いしれた。
MIN@LAA: Weaver gets Casilla to fly out for no-no
ノーヒッターとパーフェクトゲームは、全てのピッチャーにとってひとつの勲章だ。どんなに素晴らしいピッチャーでも9イニングをヒット1本も打たれずに投げ切るというのは極めて難しく、運も必要であり、10年20年第一線で活躍した大投手でも1度も達成できなかった選手だって沢山いる。ノーヒッター、パーフェクトゲームとはそういう類の勲章であり、だからこそ独特の価値があるレコードであるともいえる。
僕は個人的に、ノーヒッターまたはパーフェクトゲームには2種類あると思っている。ひとつは、誰も予想だにしなかった意外性あるピッチャーによるノーヒッターorパーフェクトゲーム。先日のP.ハンバー(シカゴ・ホワイトソックス)のパーフェクトゲームなどはまさにそれだ。ハンバーには失礼極まりないが、まだ実績も浅くまた飛び抜けて素晴らしい才能があると注目されているわけでもないピッチャーの偉業達成に、ファンはどことなく宝くじに当たったようなミラクル感を覚える。2007年には赤靴下のC.バックホルツがメジャーデビュー2戦目でノーヒッターを達成し全米を驚かせたが、あれもビギナーズラック的なミラクル感があった(バックホルツはその後現在まで着実に実績を重ねている)。キャリア200勝を挙げるピッチャーというのは例外なく歴史に残るような大投手であるが、ノーヒッターやパーフェクトゲームといった1日の偉業は究極、幸運中の幸運を掴みさえすればある意味「並」のピッチャーでも達成することができるのがベースボールというゲーム。ノーヒッターを達成する能力というか素質というのは、当たり前だがシーズン20勝する能力やキャリア200勝を挙げる能力とは少し違う部分にあり、あまり言葉は良くないが何らかの「事故」で起きてしまうノーヒッターというのは、稀にある。
とはいっても、やはり誰もが認める素晴らしいピッチャーほどノーヒッターやパーフェクトゲームを達成する確立が高いことは、言うまでもない。先ほどハンバーのパーフェクトゲームは「宝くじに当たったような」と表現したが、一方で昨日ウィーバーが達成したノーヒッターなどは「成すべき人が成した」という納得感というか、達成感がある。R.ハラデーが2010年プレーオフ初戦で成し遂げたパーフェクトゲームなどもそうだし、他にはJ.バーランダー、もっと遡ると野茂英雄がそれぞれ2度達成したノーヒッターもそうだ。彼等は誰もが認めるエースであり、時代のアイコンであり、役者である。ノーヒッターにはどんなケースでも「運」の要素はつきまとうが、それでもハラデーやウィーバーといったクラスのピッチャーによる偉業は「もし誰かがやるならあなたしかいない」というような納得感があるのだ。
Angels talk after Weaver's no-no
さて、昨日のウィーバーについて話を戻すが、個人的に「ウィーバーほどノーヒッターが相応しいピッチャーもいない」とすら思った。メジャー屈指のスターターであることはもちろんだが、彼のとことんアグレッシブなピッチングスタイルと闘争心、そして情熱的でリーダーシップ溢れる人間性はどことなく古き良き正統派エースの風を感じさせ「いつかはノーヒッターを達成すべき人」ともいうべき雰囲気があったと思う。Angels.comは"Surprised? Mates knew this day was coming"という見出しで、ウィーバーのノーヒッターがいつかは来る「べき」ものだったと語り、またHalos Heaven.comは彼の輝かしい実績と優れた人格を踏まえて"Jered Weaver DESERVED that game"と称した。
昨日のノーヒッターも去ることながら、ウィーバーのピッチングで強烈に印象に残っているゲームがある。2009年4月、当時22歳のプロスペクト、N.エイデンハートがシーズンデビュー戦で素晴らしいピッチングを見せたその夜に飲酒運転に巻き込まれこの世を去ったあの悲劇が起きた後の最初のゲーム。事故翌日は選手のメンタルを考慮しゲームは中止となったが、その翌日には予定通りゲームが行われた。仕方ない、こうしなければメジャーリーグは成り立たないのだ。天使軍団の選手達は誰一人とて心穏やかでなかったことは容易に想像されるが、そのゲームで先発マウンドに立ったウィーバーは鬼気迫る程の気迫溢れるピッチングで相手打線を封じ込め、見事エイデンハートに捧げる勝利を挙げ、そして自らも涙を流した。身長2メートルを超える長髪の大男がこんなにもエモーショナルに振る舞う姿は、全MLBファンの心を打つものであったと思う。
あの悲劇からは早くも3年が経ったが、ウィーバーは今でもマウンドに上がる度にN.A(エイデンハートのイニシャル)を土に指で刻み、戦っているという。今日のノーヒッターもまた、あの悲劇がなければ今頃素晴らしいスターターとして共にローテーションを担っていたであろうエイデンハートに捧げられたものだったのかもしれない。
I know Jered Weaver did that one for his friend up in heaven #RIPNickAdenhart
— Mackieさん (@elevenOH7) 5月 3, 2012In case you were wondering what he wrote, Weaver writes the letters "NA" on back of the pitcher's mound for his late teammate Nick Adenhart.
— Arash Markaziさん (@ArashMarkazi) 5月 3, 2012No doubt Weaver's boy Nick Adenhart is looking down and smiling #NA34 #WeaverNoHitter
— SWAGetoshi Hasegawaさん (@DaftPunker69) 5月 3, 2012何だかヒューマンドラマティックな記事になってしまったが、そんなセンチな気分にさせられてしまうくらいの、素晴らしく感動的なノーヒッターだった。
halvish
Darvish Journal 2012 Vol.5 - 月間MVPも見えた圧巻のエイプリルキャンペーン
ヤンキースファンに「時間を戻してダルビッシュと契約したい」とまで言わせた快投から5日。ダルビッシュは何ともimpressiveな自身のエイプリルキャンペーンを、慣れ親しんだ北の大地、とはいっても札幌ではなくカナダはトロントにて、華麗に締め括った。

2012.04.30 vs Tronto Blue Jays
メジャー5試合目、4月最後の登板は、ポスティング時にダルビッシュ獲得の大本命と目されていたトロント・ブルージェイズのホーム、Rogers Centreに乗り込んでのシリーズオープニングゲーム。前回のヤンキー戦はベテラン、黒田博樹とのマッチアップが注目を集めたが、今回は24歳のパワーピッチャー、K.ドレイベックとのマッチアップ。ダルビッシュが初回から2者連続三振などハイペースに三振を量産すれば、ドレイベックも負けじと4回から5回にかけて強打のレンジャーズから5者連続三振。5回まで両者共に8三振を奪うパワーバトルを繰り広げたが、ピッチャーとしての成熟度の差を見せつけたのはやはりダルビッシュ。絶好調のE.エンカルナシオンにHRを浴びるもほぼ危なげないピッチングで7回を1失点のみでスイスイ投げ切ると、味方打線は100球を超えたドレイベックに代わりマウンドに上がったクロフォードからモアランド、ジェントリーが連続HR。点差に余裕が出たためダルビッシュは7回97球で余力を残しつつ降板し、後続のM.アダムス、J.ネイサンが難なく抑えてハーラートップタイの4勝目をマーク。これによりダルビッシュは、過去10年間ではじめて4月を4勝0敗で終えたルーキーとなった。
Yu Darvish is the first rookie pitcher in the past 10 years to go 4-0 in the month of April. Sixth in past 50 years.
— Daniel Mascioさん (@DirtyDan26) 5月 1, 2012調子は前回程良くはなかったが、流石は"Mr. adjustment"、持ち前の引き出しの多さを駆使し、充分過ぎる程ゲームを支配してみせた。乱調だったデビュー戦では「Dice-Kの二の舞か?」などと書き立てられたりもしたが、ここ2試合の圧倒的なピッチングにより周囲も手のひらを返したようにダルビッシュを絶賛。そしてJaysファンやトロントのメディアからはやはり「ダルビッシュがもしJaysだったら…」という嘆き。もっとも、あのデビュー戦からまだ20日程度しか経っていないのではあるが、今日と明日で気がコロコロ変わるのがファン心理というのもだ。
Yu Darvish is looking like he's worth every penny the rangers spent to get him tonight
— Damian Riveraさん (@driv44) 5月 1, 2012Japan will go nuts when Yu Darvish is the starting pitcher for the American League All-Stars.
— Mark Whitakerさん (@JaggedMark) 5月 1, 2012#Darvish is actually too good. Jays should have got him!
— Justin Di Tarantoさん (@JustinDitaranto) 4月 30, 2012オールスターゲームの話まで出てくるのは幾分気が早い気もするが、とはいえそんなことを考え始めても決しておかしくないくらいの旋風を巻き起こしている。デビュー戦では最初の2イニングで5失点し「この先どうなることやら」とも思われたが、以降4試合は27.1IPを投げてERAは何と0.98。奪三振率の高さと合わせて、数字だけ見ても既にリーグ最上級クラスのスターターになっている。
また数字以上に、ダルビッシュの「投げる姿」はここまで、アメリカのファン達にセンセーショナルなインパクトを残している。エグゾティックな美貌も去ることながら、100球を超えてなお96mphを叩き出すパワーに加え、右打者が仰け反る大きなカーブに犯罪的な威力を誇るツーシームなどひとつひとつのブレーキングボールの質の高さ、また球種だけでなく投球フォームや腕の出し位置までをも状況に応じて自由自在に変化させるアメーバピッチングは、ビジュアル的に強烈なエンターテイメント性がある。そして何より、数ヶ月前に異国からやってきたばかりの25歳の青年とは思えない冷静沈着な佇まい。5試合目の登板となった今日などは、ちょっとピンチを作った程度で動じる気配など微塵もなく投げるべきボールを投げて淡々とアウトを重ね、そしてどこか気怠そうな表情でマウンドを降りベンチに戻って行く様は、既にメジャートップクラスのスターターとしての風格が充分に漂っていた。
The thing I like most about #Rangers Yu Darvish: Never looks rattled. Seems ready to handle any situation. #yumania
— Richard Durrettさん (@espn_durrett) 5月 1, 2012さて、いかんせん投打が噛み合いまくっているレンジャーズ。ダルビッシュはその中心としてフル回転しているわけであるが、4勝0敗というレコードをマークしているピッチャーは実はダルビッシュ1人だけではない。「ダルビッシュを救ったもう1人のルーキー」 でも紹介したリリーフ左腕のC.ロスはここまで7試合にリリーフ登板し、何とこちらもハーラートップタイの4勝0敗。リリーフピッチャーが7試合で4勝も挙げているのは運もあるが、ブルペンにおける唯一のサウスポーとして重要な場面で起用され、しっかり結果で応えていることも大きい。ゲームのターニングポイントに出てきて、そこを1イニングでもしっかり抑えれば、すぐにでもオフェンスが勝ち越してくれるから勝ち星が付く。そんな投打の噛み合いっぷりがロスの4-0というレコードに現れているような気がする。
Have rookie teammates EVER started 4-0 in the month of April? Find out on Rangers Live on @FSSouthwest after the game. #Rangers
— Emily Jonesさん (@EmilyJonesFSN) 5月 1, 2012月間MVPも見えてきたダルビッシュの次回登板は5/6、再びアウェイでのクリーブランド戦の予定だ。
halvish